LGSAカンバセーションズ #2|都市論・メディア論とストリートアート—平成と令和の渋谷から

202647

日時|2026425日(土) 16 – 1730
会場|LGSA by EIOS

LGSAカンバセーションズは、LGSA by EIOSが設定する独自のテーマをめぐり、多様なゲストが対話するトーク動画およびその公開収録のシリーズです。

本トークでは飯田豊さんと南後由和さんをゲストにむかえ、みずからの研究の振り返りを起点に、ストリートアートをめぐる表象やディスコースが日本でどう展開し、都市やメディア、テクノロジーの変化といかに連動してきたか、そこで渋谷はどのような役割を担ってきたのか、といったトピックを多角的に論じていただきます。

シリーズ/#

LGSAカンバセーションズ #2

タイトル

都市論・メディア論とストリートアート—平成と令和の渋谷から

出演

飯田 豊(メディア研究者)
南後 由和(社会学者)

日時

2026年4月25日(土)
開場 15時30分
開始 16時00分
終了 17時30分

会場

LGSA by EIOS
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町11 – 6 DAGビル 401号

形式

公開収録

本トークは動画の公開収録として会場で参加できます。参加方法はページ下部をご覧ください。
動画は後日、大山エンリコイサムスタジオ公式YouTubeプログラムにて無料でご覧いただけます。

フランスの社会学者ジャン・ボードリヤールによる1975年の論文「クール・キラー、または記号による反乱」(註1)は、当時ニューヨークの地下鉄やストリートを席巻していたエアロゾル・ライティング(グラフィティ)を本格的に論じた最初のテクストのひとつである。そこでライティングは「からっぽの記号」と定義され、その路上への氾濫は、既成のコード化された記号への反乱であると分析された。

記号、路上、氾濫、反乱——こうした語彙のつらなりには、近代とポスト近代、または政治の時代と消費の時代という対比的なふたつの文脈の混在が認められる。路上や反乱といった言葉からは階級闘争という共産主義のナラティブが、記号や氾濫といった言葉からは浮遊するシミュラークルという資本主義のシステムが連想される。ボードリヤールの観察は、ライティングに内在するこの両義性を的確に捉えていた。

これは呼称の問題と無関係ではない。70年代の初頭、ストリートライターたちは自身の行為を「writing(かくこと)」と呼び、行政やメディアは「graffiti(落書き)」と呼んだ。前者は中立的だが、後者は「反社会性」のニュアンスを帯びており、ライティングを抵抗や反乱といった階級闘争のナラティブに結びつけた。やがて後者の定着により、ボードリヤールが捉えた両義牲は見失われ、理解が偏ってしまった。

たとえば日本では、ストリートライターたちの現場主義と、90年代のポストコロニアリズムやカルチュラルスタディーズの普及が合わさり、ライティングは「声なき者の声」といった実存主義風のトーンをまとう抵抗文化のイメージで固められた。雑誌『現代思想』2003年10月号「特集=グラフィティ マルチチュードの表現」は、当時のその雰囲気をよく表している。

この論調はしかし、新自由主義経済およびグローバル化、情報化が加速する冷戦後の世界で、ライティングやストリートアートが失速せずに拡張していることを説明できてはいない。そこには、ボードリヤールの観察が示唆したもうひとつの側面、すなわちライティングは、都市をメディアにした広告的・記号的なコミュニケーションでもあるという視点が抜け落ちているのである。

2000年代の中頃に飯田豊さんと南後由和さんが渋谷を中心に行なったフィールドワークと研究は、ストリートアートをめぐる言説において欠落していた上記の視点を補完したという点で重要である。都市論、メディア論、コミュニケーション論、社会学、建築批評などのフレームワークを用いたふたりの考察は、ライティングから政治的主張を読み取ろうとする旧来の議論とは異なる可能性を切り拓いた。

とりわけ南後さんによる2005年の論文「動物化するグラフィティ/タトゥー」は、いま述べたような議論のアップデートを意図的に試みており、特筆に値する。それは、当時のゼロ年代批評と呼ばれる潮流が生んだキーワードのひとつであり、記号消費の最先端のモードと見做されていた「動物化」の概念が、エアロゾル・ライティングの読解に応用されていることからも明らかである。

本トークでは飯田さんと南後さんとをゲストにむかえ、みずからの研究の振り返りを起点に、ストリートアートやエアロゾル・ライティングをめぐる表象やディスコースが日本でどう展開してきたか、それは都市やメディア、テクノロジーの変化といかに連動してきたか、そのなかで渋谷は——平成から令和へのシフトも含めて——どのような役割を担ってきたのか、といったトピックを多角的に論じていただく。

註1:ジャン・ボードリヤール「クール・キラー、または記号による反乱」『象徴交換と死』ちくま学芸文庫、1992年


出演者プロフィール

飯田 豊|Yutaka Iida

1979年、広島県福山市生まれ。メディア論、メディア技術史、文化社会学。立命館大学産業社会学部教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。著書に『テレビが見世物だったころ——初期テレビジョンの考古学』、『メディア論の地層——1970大阪万博から2020東京五輪まで』、『メディアの歴史から未来をよむ』、『万国博覧会と「日本」——アートとメディアの視点から』(共著)など。現在、放送倫理・番組向上機構[BPO]青少年委員会副委員長。

関連リンク

ウェブサイト|iida-lab.org
X|x.com/yutakaiida

南後由和|Yoshikazu Nango

1979年大阪府生まれ。社会学、建築・都市論。法政大学デザイン工学部建築学科教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。博士(学術)。東京大学大学院情報学環助教、特任講師、明治大学情報コミュニケーション学部専任講師、准教授を経て、現職。デルフト工科大学、コロンビア大学、UCL客員研究員などを歴任。主な著書に『ひとり空間の都市論』、『商業空間は何の夢を見たか』、『建築の際』など。

関連リンク
研究室ウェブサイト|nango-lab.jp
X|x.com/y_nango


イベント参加方法

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動画の公開について

大山エンリコイサムスタジオ 公式YouTubeプログラムにて無料公開を予定しています。
公開の日程は本ウェブサイトおよびSNSにてお知らせをいたします。

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lgsa@eios.co.jp