展示概要

Artwork ©︎Christian Aaron Mendoza
タイトル

クリス・メンドーザ追悼展
消えない光のメカニズム

会期

2026年11月12日-2027年3月21日

会場

LGSA by EIOS

協力

GION
松岡 秀典(HIDDEN CHAMPION)

LGSA by EIOSは、クリス・メンドーザ追悼展「消えない光のメカニズム」を開催いたします。

クリスチャン・アーロン・メンドーザ(Christian Aaron Mendoza, 1972–2026年)は、ニューヨークとマイアミを拠点に活動したアーティストである。エアロゾル・ライティングの文化を起点に、製図を彷彿させる幾何学的な描線、詩性を感じさせる言語や色彩、速度とサイエンスフィクションの想像力、みずからの出自にひもづく古代文明への憧憬など、多様なイマジネーションが注がれたその作品は、独自の心象風景だと言ってよい。基盤にあるのは、建築家の父親からの影響と、ニューヨークで養われた都市生活の経験である。

その作品を読み解く鍵のひとつは、製図と描線の関係だろう。一般に建築の製図では、線は設計された建造物のイメージに従い、その構造を伝える役割にとどまる。メンドーザはこの従属性を転覆する。描線という行為そのものに主眼を置き、ジオメトリックな規則性と自由な運動を往来しながら、現実には存在しない建造物をキャンバスに出現させる。製図の精密性とライティングの即興性が結びつき、過去の記憶と未来の展望が重なり、集積する線からサイファイ・ファンタジーの構造体が立ち上がっていく。

メンドーザの作品に息づくもうひとつの創作原理は、ヒップホップである。ステッカーを用いたコラージュでは、既存の素材を切断し、貼り合わせることで新たな造形に再構成する。フリージャズのように躍動し、複数の文脈を融合させた固有のイディオムは、同時に、複製技術を前提にしたサンプリングやリミックスという現代の方法論と隣り合わせでもある。古代文明と電子文化、都市の面影と宇宙の摂理をひとつの画面に共存させること。異質なもの同士を結びつけること。そうした感性がメンドーザの表現の深層に脈打っている。

日本でも知られるインクヘッズやバーンストーマーズといったアート集団の一員として、メンドーザは日本のアートシーンとも交流を重ねてきた。LGSA by EIOSには、本人から譲り受けた作品が2点収蔵されている。本展はそれらを含めて、メンドーザと親交のあった複数の日本人関係者が保管してきた計4点の作品によって構成される追悼展である。作品の来歴そのものが、国境を越えて育まれた人的ネットワークや文化的なつながりを伝えている。その軌跡は、メンドーザが頻繁に使っていた本展タイトルの言葉とも共振する時代のドキュメントでもあるだろう。

個人的なことにも触れたい。『ストリートアートの素顔』の校了を目前に控えた2019年12月、メンドーザから連絡があり、エアロゾル・ライティングの先駆者PHASE2の逝去を知った。その訃報は、同書の末尾に記されている。それから約6年半が経った2026年5月に、PHASE2の長年の友人であり、コラボレーターでもあったCOCO144が、LGSA by EIOSでの個展のために来日した。そのとき、メンドーザが危篤状態で入院していることを伝えられた。まもなくして、その逝去も知った。ふたつの訃報は、私のなかで思いがけずつながることになった。

PHASE2の訃報をメンドーザから知らされ、そのメンドーザの危篤をCOCO144から伝えられる。このことから、エアロゾル・ライティングの歴史が、作品や記録だけでなく、世代を超えた人と人の関係性によってこそ紡がれてきたことを感じる。才能あるアーティストに会えなくなることは、深い喪失感をともなう。しかし、言葉が人から人へと伝えられ、作品が受け渡され、意志が継がれていくなかに、生きつづける記憶や感覚がある。本展が、クリス・メンドーザの表現と人格の豊かさを共有する機会となることを願う。


プロフィール

Christian Aaron Mendoza|クリスチャン・アーロン・メンドーザ

1972年、ニカラグアの首都マナグア生まれ。アーティスト。ニューヨークとマイアミを拠点に活動した。建築家の父親のもと、幼少期から設計図や古代文明に関心を寄せる。1984年、12歳のときに第二次ニカラグア内戦を逃れて家族とニューヨークへ移住。新しい地元ブロンクスでエアロゾル・ライティングやヒップホップに触れ、EDECというタグネームを考案する。1988年、16歳でフロリダ州マイアミへ移住。1990年にブロンクスへ戻ると、本格的にライティングを開始。1992年、ライティング集団インクヘッズ(Inkheads)の結成に参加。1993年にはインクヘッズのマイアミ支部が発足した。その後、ニューヨークを拠点とするアート集団バーンストーマーズ(Barnstormers)にも関わり、米国内外で活動を行なう。日本では大図実験、カームアンドパンク・ギャラリー、WAGギャラリーなどで作品を展示。建築の製図を彷彿させる精密性とライティングの即興性を融合させた独自の表現を展開した。2026年死去。

関連リンク
ウェブサイト|https://www.chrisamendoza.com


関連イベント

展覧会関連トーク動画の公開収録の開催を予定しています。
詳細は、LGSA by EIOS公式ウェブサイトおよびSNSにてお知らせいたします。